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1カラットの奇跡 第五話 光の矢(2)

 やはり、悪いことは出来なかった。その日は、朝から小雨が降っていた。法事と偽って、裕子との競馬をキャンセルした和也は、後ろめたさを引きずって羽田空港へ車を走らせていた。気のせいか、雨が行ってはいけないと引き止めているようにも感じた。
多摩川トンネルを走っているとき、ペンダントからまた薄青い閃光が放たれた。一瞬おやっとも思ったが、和也はその現象に、その頃は慣れていたので、気にせず車をそのまま走らせた。
 和也は羽田空港の到着ロビーで待っていた。そして、九時着の飛行機で到着していた客の群れから優希が現れた。
優希は、それまでとは異なり、ボーン柄のシルエットのジーンズに、D&Zのロゴ入りのピンクのパーカーのカジュアルスタイルで登場した。デニムの帽子も被っており、彼女は完全に遊びモードに入っている雰囲気だった。
「お待たせ!」
優希は元気良く右手を上げて和也に走り寄った。
「よっ、元気か」
和也も軽く右手を上げて、優希の手の平を叩いた。
「もちろん、元気だよ。今日は元気百倍だね。さあ、早く行こうよ」
 優希は和也の左手を引っ張って、駐車場の方向へと走り出した。彼も彼女の明るい無邪気な笑顔を見て、裕子のことはすっかりと忘れて、何時の間にか楽しそうに走っていた。

 一時間ほどして、車はラビットワールドに到着した。雨は、もう上がっている。梅雨時のせいか、人の波は若干少なかった。
二人は入場門を通り過ぎていた。そして、優希はスターライトバザールの店並に目を奪われて、目を輝かせている。そこには、通常とは異なる不思議な世界が並んでいた。
店の前では、白いうさぎの格好をしたエキストラが数人で踊っていた。ピエロが宙に浮いた風船を子供に配っている。
店の中では、店員も、うさぎの格好だった。奥の棚には、色々な格好をしたうさぎのピーさんのぬいぐるみが、笑うように置いてあり、うさぎの森のようだった。
その雰囲気は、自然と店の中へ、優希を吸い込んだ。和也も仕方なく、その後へと続いた。人の多い店内を彷徨って、ミニラビットの、耳のカチューシャの前で、優希の足が止まった。
「ねぇ、これ欲しい!」
優希は瞳を清流のように潤ませて和也を見つめている。
「えっ、これ着けて回るの。ガキだな」
「いいの。これを着けて回らないと、ラビットの雰囲気が出ないの。それに、ほら、大人も着けているよ」
優希は人込みの中のOL風の二人連れを指さして、舞うように微笑んでいる。
和也は、そのOL達の後姿に何処か見覚えを感じていたが、それよりも、そのOL達の頭の耳を見て納得した。
「分かった。買ってやるよ」
 優希はデニムの帽子を和也に渡して、嬉しそうにミニラビットの耳を頭に着けた。
和也は仕方なく優希の帽子を被った。そして、彼の左腕を取って、彼女はルンルン気分で店を出た。

 和也は、スターライトバザールを抜けて広場まで出ていた。
「さて、どれに並ぶか。まずは、ビッグファイアーか?」
「えっ、私、マウンテン系はパスだね」
優希は怖がって首を横に振っている。
「どうして? ここまで来て、三つの内の一つも乗らないで帰るのは馬鹿だろう」
「絶対に嫌! 私、ジェットコースター系は、苦手なの。だから、パスだね」
優希は怒り気味に、首を再度大きく横に振った。
「そうか。それでは、どこに行くのだ?」
「白雪城! 私、メダルを貰うの」
優希は得意そうに目を星のように輝かせている。
「えっ、あれを貰うのは、小さい子供だ。はずかしいから、中で手を上げるな」
「いいの。貰うの!」
優希は胸をつんと出していた。
「分かった。行こうか」
 和也は観念した。もう既に光の矢の役に入り込んでいる優希に何を言っても、聞き入れて貰えないことを悟った。そこは、非常に不思議な空間だった。大人を童心に返してしまう。特に若い娘達は、それを楽しんでいる。彼も少しは、昔を思い出して城へと向った。

 城の前で、二人は四十分も待たされた。漸く二人は中に入った。そして、筋金入りの役にはまっているガイドが登場した。
そのガイドは鏡の中のビデオと一人で会話をしている。二十人ほどのツアーの客は、優希を除いてまだ乗り気ではない。ガイドは乗りの良い彼女をロックオンしている。二人は良いコンビとなり、徐々に客達のテンションも上がっていた。
 いよいよ、クライマックスの光の矢だった。ガイドが主役を募っている。当然、優希は目を光らせて自信を持って手を上げた。しかし、お約束通りの小さな子供が指名された。彼女は、少し肩を降ろしてがっかりした。
ところが、その子供が泣き出して前に出て来ない。どうも、巨大な魔物の像を怖がっているようだった。ガイドが手を引いていたが、その子供は嫌々をして、いっそうと大泣きになる。そして、ガイドは諦めて、優希の手を引いた。
優希の顔には、目がつぶれてしまうくらいの笑みが広がった。彼女は心を大きく弾ませて、光の矢を魔物に向かって放った。そして、段上でガッツポーズを取った。客も彼女の大胆な演技に強めの拍手を送っていた。
 ホールを出た所で、優希は客の前でメダルを受け取った。彼女は、満面の笑みを浮かべて満足していた。ところが、まだ小さな子供は泣き続けている。彼女は子供に近づいて、そっと貰ったメダルを首に掛けて頭を撫でた。
すると、子供は泣き止んだ。そして、笑顔で優希を見つめている。それを見守っていた観客から拍手の嵐が起きていた。和也も彼女の優しい一面を見て感動して、自然と拍手をしている。彼女は、さりげなく城を出て、彼も後を追った。

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テーマ : オリジナル小説
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