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1カラットの奇跡 第一話 奇跡を売る女(2)

 そのままフロアーに残っている和也は、また大きく落胆して下を向いていた。それから、顔を上げて遠くの壁際を眺めた。そして、そこに立っている赤い帽子の若い女を見ていた。
 女は少し小柄な細身の長い黒髪で、紫のワンピースをまとっていた。その胸には、1カラットほどのダイヤのペンダトをぶら下げている。そして、突然そのペンダントが、薄青い閃光を発して和也の目を貫いた。
 和也はその光が気になった。そして、その女に近づいた。その女の小さな胸を見つめているような視線で、ペンダトを見ていた。
和也の目つきに、女は驚いた。そして、女は彼を睨みつけて、胸を両手で覆い隠して逃げ去った。
 和也は気まずくなった。別に、胸を見ていた訳ではない。そもそも、彼女のような小さな胸は好かない。そう思うと、彼は壁に背をつけて、天井を見上げていた。
 それまでの和也にはツキがなかった。朝から、メインレースまで、一度も当たりの快感を、味わうことは出来なかった。もう続けるのは苦痛だった。そう思った彼は、最終レースはやらずに、引き上げることを考えていた。
その頃は、仕事でも、和也はあまり良いことがなかった。納入したシステムの品質が悪く、顧客に頭を下げる毎日が続いていた。彼は何でも良いから、ストレスを発散させたかった。

 トイレから戻った浩二と一緒に、和也はWINSを出た。坂沿いの街路樹は、夕暮れの中で、静かに新緑の葉を揺らしていた。揺れている葉から流れる爽やかな香りが、和也の心をほんの僅かに癒していた。
 駅前に続く道の途中、道の右側に一軒のパチコン屋があった。二人は、そこへ近づいていた。そして、そのネオンの光は、和也の心を、誘い込むように、ちらついていた。
「浩二、もう一勝負やるから、お前も付き合え」
「俺は止めときますよ。大勝ちした後に、パチコンをやると、全部持っていかれますから」
「そんな冷たいことを言うな。先週は、お前に付き合った」
「あっ、それでは、少しだけ付き合います」

 店内の雰囲気はあまり良くなかった。箱を積んでいる台が少なく、勝つイメージが浮かばない。しかし、WINS帰りの客で、店は埋まっていた。
 空台を探して、二人は店の奥へと進んでいた。そして、六箱くらい積んでいる赤い帽子の女が、和也の目を引いた。WINSで見ていた女だった。
女は淡々と台を見つめていた。そして、女が身に着けているスリットの入ったワンピースの下部からは、脚線美の脚が少し出ており、和也の心の一部を刺激した。
 和也は、女の右隣の空台に座ろうと思った。ところが、浩二が先に、そこへ座っていた。仕方なく、和也は少し不機嫌な表情をして、浩二の右隣に腰を下ろした。その隣では、老婆がリーチを楽しんでいた。

 和也は、左肩で浩二を軽く叩いた。
「おい浩二、少しは気を使え! 俺より先に、若い美人の隣に座わるな」
「気は使っていますよ。佐藤さんは、席順でつまらないツキを使うつもりですか? 俺は仲間思いでしょう」
 和也は気を取り直して、三千円のカードで上皿に玉を流した。ハンドルを回して、球筋を調整している。すると、それらの玉の一つが、スタートチェッカーに入った。
 そして、いきなりリーチが掛かった。しかも、薄紫縞の魚群が、通り過ぎている。それは、スーパーリーチだった。
和也は、慌てて、ハンドルから手を放した。そして、大きな期待の目で、真剣に画面を見つめていた。浩二も和也の画面を覗いている。しかし、当たり絵柄は一つ手前で止まった。
「あっ、お前が邪魔をするから外れた。自分の台に集中していろ。そっちも、リーチだ!」

 浩二は、余裕で自分の台を見つめていた。和也も仕返しの為に、浩二の台を覗いている。和也のときと、同じように魚群が通過していた。しかし、小魚の縞模様は、見たこともない緑だった。
「浩二、俺の邪魔をしたバチが当たった! そんなインチキなリーチは、見たことがない。それはダメだな。お前の運もここまでだ!」
「そんな言い方を、しなくても、いいじゃないですか。まだ分かりませんよ。邪魔しないで下さい」
 うるさく騒いでいる二人に向って、浩二の隣の若い美人の女が冷たく口を開いた。
「それ、プレミアムです。少し、静かにして下さい」
 そのリーチは大当たりとなったが、体裁が悪いので、お通夜のように、浩二は玉を出していた。そして、その当たりは、五連荘まで発展したところで終わった。
その間、勿論、和也には、当たりがなく、スーパーリーチさえも、最初の1回のみだった。

 浩二は時計を見て、帰ることを和也に告げていた。和也は浩二を引き止めて、自分が出すまで付き合うように言った。しかし、渋々と合コンの約束があることを話して、浩二は帰ろうとした。
「待て、俺も連れていけ」
「いや、二対二なので、佐藤さんが来ると、バランスが崩れます」
「何を言っている。お前は仲間思いなのだろう。よって、仲間思いのお前が取れる選択子は、わずか三つだ」
「一つは、俺を合コンに連れていく。もう一つは、その五箱を俺の為に置いていく」
「はあ、それでは、最後の一つは、何ですか」
「最後は、五箱を俺にくれて、俺を合コンにも連れていく。どうだ、これぞまさしく、仲間思いの鏡だろう」
「ふうー、佐藤さんには、叶わないですね。分かりました。付き添い役でも良いのなら、連れて行きましょう」

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Author:夢野広志(むのひろし)
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