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1カラットの奇跡 第五話 光の矢(5)

 同じ頃、秩父路は久々の晴天で心地よい風が吹いていた。道の脇の杉林も緑の香りを飛ばしている。その清涼な香りは、旅人の心を洗っていた。一台の青いオフロードバイクが、その林道で金属音を軽快に轟かせていた。
 裕子は、心の汚れを払うように走っている。その清い風で、自分の醜い心を洗い流したかった。彼女は、その前日の自分の行動を悔いていた。完全な嫉妬心だった。和也から訳も聞かず、手が無意識に強い感情で先に動いていた。醜い顔で泣く姿を彼に見せたと嘆いていた。
 きっと、何か事情があったに違いない。そういえば、和也の実家は千葉だった。法事なのだから、親戚も集まるはず。そうすると、あの幼そうな顔の娘は、親戚だったのかもしれない。そうなると、裕子はまるでピエロだった。
裕子は、和也を信じなかった心を恥じていた。話しをすれば良かった。でも、話しを聞くのが何か怖かった。苦労して築いていた彼との思い出が、砂の城のように崩れ去ることは避けたかった。
 いや、親戚の年頃の若い娘と手を繋ぐのは不自然だった。やはり、和也の女か。それに、法事で、何であの場所でのんびりと遊んでいる。礼服も着ていない。彼は嘘つきなのか。当然だった。彼はギャンブラーなのだから嘘つきに決まっている。そんなことは、裕子には最初から分かっていることだった。
 惚れた裕子の負けだった。彼女は、どうしても彼を忘れることが出来なかった。それに、あのロリコン顔の娘に、彼女は負ける訳には行かないと思っていた。そして、またあのカフェで、一からやり直すしかないと彼女は決意を固めた。
 裕子は、森林の中でバイクを爆走させて、気持ちがすっきりした。そして、和也への彼女の気持ちを再確認した。彼女は何時も何かあると、その道を走る。その道は、いわば母なる道だった。ゆりかごのように気持ちが良い。彼女は、その道で完全にリフレッシュした。
和也との思い出を振り返って、裕子は夕暮れの林道を自宅に向って走っている。その思い出の中で、彼が最初に言っていたコーナーは思いっきり車体を倒せということを、彼女は思い出して笑っている。時折、バイクを倒してコーナーを楽しんでいた。
 緩やかな下り坂の右カーブに差し掛かったとき、裕子はバイクを無意識に倒しかけていた。夕闇の路面に潜んでいた湿った木の枝が、彼女には見えなかった。そして、オフロードバイクの後輪は、簡単に外に滑り出して車体は円盤のように回転をしていた。
裕子の体は、綺麗な弧を描き、カーブの外の深い谷へ、スローモションのように投げ出された。滞空時間がとても長い。まるで、森の中でミツを探して、ふわふわと浮いているミツバチのようで、彼女は非常に気持ちが良かった。母の胎内で、ゆりかごのように大切に抱えられているようでもあった。そして、空には、星が光の矢のように並び冷たく輝いていた。

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テーマ : オリジナル小説
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