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1カラットの奇跡 第六話 月明かりのハニーハント(2)

 七月も末になって、蝉が喧しく鳴いていた。朝から暑かった。風が吹いても、アスファルトで暖められた都会の風は、不快感を増すばかりだった。
和也は公園の脇を茶系のスーツを着て、汗を流して歩いていた。彼は夏でも上着はきっちりと羽織っている。上着を手に持って歩くのは、ビジネスマンとして邪道と、彼は強く思っている。汗を流してでも上着を着こなすことに、男の美学を感じていた。
 何時ものカフェに着いて、和也は中へと入った。店内はオアシスのように涼しく爽やかだった。彼は生き返っている。朝は、やはりそこに寄らないと、彼は何か落ち着かない。
アイスラテで汗を取って、和也はマルボロに火をつけた。何もかもが、昔に戻っていた。元々そこは、彼だけの憩いの空間だった。
何時しか、裕子と二人で過ごす空間となっていたが、それも、昔の僅かな一時のことだった。
 その空間も和也も、裕子と出会う前に戻っていた。しかし、少し異なるのは、遠く離れた彼の向かいの席に、サングラスをかけている髪の長い女が座っていた。毎朝、その女と目が合うことを、彼は少し気にしていた。
 そして、十年続けていた競馬を、和也は止めた。何故なら、二人でダービーをSシートで観戦した思い出が、強く残っている。競馬を見ていると、彼はそれを思い出してしまう。そして、もの凄く辛く、胸が痛くなる。それに、あの二百七十万は異様だった。何か、途轍もない怖さが、彼の胸に焼きついていた。彼には競馬を止めるしか道が無かった。着メロもGⅠファンファーレから、ダイヤモンドに替えた。
 しかし、和也はギャンブルを止めた訳ではなかった。パチンコ一本でがんばっている。パチンコならば、一日で二百七十万にもなることはない。その頃の彼が安心して遊べる唯一の楽しみだった。

 和也は、何時ものようにぼんやりと、窓の外の通行人の流れを眺めていた。煙を吐いて、アイスラテに手をつけようとしたとき、ダイヤモンドが流れた。
「おはよう! 優希だよ。羽田に着いたの」
「おっ、また来たのか」
「もう、または、ひどいよ。月一回の楽しみだからね。もう少し、感激を込めた言葉で迎えてくれないと、泣いちゃうからね」
「そうだな。これは、これは、お姫様。遠路はるばる、お疲れ様でございます。拙者も、お可愛いお声を頂き、大変な果報者でござります。どうだ、これくらいで良いか」
和也は少しからかうように話していた。
「あっは、それは時代劇だね。それでは、苦しゅうない、もっとちこう寄れ、わらわを江戸の町に案内するのじゃ。今宵七時に迎いに参れ。良いな!」
優希も調子良くお姫様役に入り込んでいる。
「ははあ、御意にござりまする」
「それでは、楽しみにしているね。バイビー」
優希は明るく携帯を切った。
そして、和也の心は、また楽しみで膨らんでいた。どこに連れて行こうかと、にやついて考え始めた。

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テーマ : オリジナル小説
ジャンル : 小説・文学

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夢野広志(むのひろし)

Author:夢野広志(むのひろし)
小説の夢見へようこそ♪
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