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1カラットの奇跡 第七話 森の妖精(3)

 その翌日も入道雲が出ていた。朝からの日差しも強い。窓からは、潮の香りが漏れていた。
前日のように朝食を済ませた優希は、通勤用の服を着始めた。彼女は、D&Zの黒のロゴ入りタンクトップにパンツをはいた。
和也は車で優希を四ヶ町アーケードの中程の所まで送った。そのアーケードは、四キロと長く数多くの商店が軒を並べていた。
優希の店は、そのアーケードの中にある。しかし、和也には近寄らないようにと彼女は言った。そして、帰りもその場所で待ち合わせることを言って、彼女は人がまばらなアーケードの中に消えた。

 和也は、何処に行く当てもなく、三十五号線を早岐方面に向けて車を走らせた。彼は暫く進んでいた。そして、駐車場の広いパチンコ屋が彼の左前方に現れた。彼は、そこで車を止めた。
そのとき、またペンダトが青い閃光を発した。それを見ていた和也は、少し期待して店内へと入った。
 夏休みのせいか、空き台を探すのに和也は苦労をした。彼は店の奥で何とか台を見つけて腰を下ろした。そして、三千円のハウスカードを左の溝に入れて、彼は上皿に玉を流した。
残り五百円位の所で、和也はカメの当たりを引いた。その当たりは確変だった。彼は顔を弾ませた。そして、その当たりは五連荘まで伸びた。確変が終了したところで、彼は軽快に食事札を取って、近くの喫茶店でカレーライスを食べた。
 午後に入ってから、和也の調子は悪くなった。一箱飲まれては、単発の当たりを繰り返している。そして、彼は眉を顰めていた。
結局、最初の五箱は、その台が全部飲み込んで、和也は十八時半に店を出た。彼は期待が外れて肩を落としていた。

 十九時少し前に、和也は待ち合わせ場所の近くの駐車場に車を入れた。そして、優希と朝別れた場所まで歩いた。まだ、彼女は居なかった。彼は人の流れを眺めてマルボロに火をつけて彼女を待っていた。
 それから少したって、優希が現れた。彼女の横に同じ位の年の女が一緒に居る。
その女は、D&Zのライトブルーのノースリブのワンピースを身に着けていた。そして、その女は優希より背は高いが、胸は小さく髪は茶系のメッシュでショートだった。
優希は右手を和也に向って軽く上げた。
「お待たせ!」
「おう。ところで、そっちのお連れさんは」
「あのね。この娘はね。私と同じお店の吉村豊美。大の仲良しなの。和也のことをね。お話したら、一緒に来たいって言うから、連れてきたの。いいでしょう。一緒に食事しても」
「豊美です。お邪魔して悪いけれど、よろしくお願いします。お食事の案内なら、きっとこの娘より、役に立ちますよ」
豊美は軽く笑って会釈した。
和也はクールに、
「佐藤と申します。こちらこそお世話になります。それでは、案内よろしく」
 三人は下京町の方へ歩いている。優希は豊美に見せ付けるように、和也と腕を組んで少し甘えていた。
豊美の案内で、三人は和食の料理屋に入った。人で賑わう店の中には、大きな生簀があって鯛や平目が泳いでいる。うちわえびという円形の変わったえびも水槽の中で泳いでいた。
三人は小さな個室の座敷に座ってビールで乾杯した。その座敷は、床の間にカモメが描かれている掛け軸が掛かっており、三本の向日葵が生けてあった。座敷の窓の奥には、小さな日本庭園が広がって獅子脅しが優しく水を打っていた。そして、三人は刺身や天ぷらを楽しんだ。
和也は、うちわえびの天ぷらに手をつけた。そのえびは、その地方の特産品で、彼はそれまで食べたことがなかった。そして、その味は、ぷわりとした食感で、最高の味だと彼は思った。
優希は何時ものように、目で味わって黙々と食べている。時折、至福の笑みを顔一杯に広げていた。食べ物がテーブルの上にある間は、彼女はそれに夢中だった。

 食事が一段落して、豊美は和也に話しかけた。
「あの。佐藤さんは、何をしているのですか」
「システムエンジニアだ」
和也は気取って返事をしていた。
豊美は褒めるように、
「ヘぇ~、格好いい職業ですね」
「そんなに格好は良くないのだね。土下座役だからね」
優希は茶化すように皮肉を言っている。
和也は少し目を赤くして、
「優希。そんなことを言うな。実も蓋もないよ」
「謝り役ということは、それだけ、お偉いのですか」
豊美はその場を取り繕っていた。
「そうだ。優希、こういう風に言うのだ。分かったか!」
「はいはい」
優希は冷めた返事をしていた。
「ところで、今度、私が横浜に行くことになったのです。優希が横浜店をクビになりましたから。今度、横浜を案内して頂けないかしら」
豊美は和也に急に切り出していた。
優希は蜂の巣を突かれたように、慌てて豊美を睨みつけた。
「あっ、それはダメだね。絶対ダメだね。私と和也は、超ラブラブなの! 豊美の入る隙間はないからね。私達は、恋人以上なの。残念だったね」
「そうじゃないのよ。佐藤さんのお友達を紹介して頂ければ良いのです。私は、貴方達の邪魔はしないわ。だって、優希は私の親友でしょ」
豊美は冷静に訳を話していた。
それを少し納得した優希は頭を下げて、
「そうだね。メンゴです」
「まあまあ、そういうことなら、丁度良いやつらが何人か居るよ。横浜へ来たら、ここに電話しなさい」
和也は偉そうに、彼の携帯の番号が書かれている名刺を豊美に渡した。そして、さり気なく携帯で彼女の顔を写していた。
「あっ、ありがとうございます」
「和也。私、信じているからね。豊美に手を出さないでね」
優希は潤んだ瞳で和也に強く釘を刺していた。
しかし、和也は調子良く、
「大丈夫だ。俺の友達にも、この幸せを分けてやる。豊美ちゃんは、優希の友達だろう。お前も、少しは分けてやれ」
「はいはい」
優希は渋々と相槌を打っていた。
 それから、優希は段々と調子を上げて、横浜での和也とのエピソードを、得意そうに豊美に話し始めた。
豊美は羨ましそうに聞いている。そして、和也は照れて黙ってその話をやり過ごしていた。
零時過ぎに、その宴はお開きとなった。和也は車をそのまま駐車場に残して、二人で歩いてアパートに帰った。二人とも酔いが回っていたので、そのまま倒れるように寝てしまった。

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テーマ : オリジナル小説
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