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1カラットの奇跡 第八話 助手席のジハード(2)

 九月も中旬になって、少し涼しくなっていた。その翌日からは三連休だった。
和也は早々とパソコンの電源を切って、壁際の時計を見つめて午後五時を待っていた。そして、五時きっかりに席を立って会社を飛び出した。彼は車で羽田に向っていた。
 和也は午後七時前のANA長崎行きに乗っていた。前回とは異なって、長崎経由で佐世保入りをしようと、彼は考えていた。着替えは向こうに置いてある。それ故に、彼の荷物は少ない。殆ど手ぶらに近く、まるで彼は自宅に戻るような雰囲気だった。
 それから二時間が経過した。飛行機の窓の外には、七色の宝石を散りばめたような美しい夜景が現われていた。その宝石は、山の斜面一杯に広がって、まさに百万カラットの輝きで、この世の美しさを越えていた。
和也は、その荘厳な長崎の夜景が見たかった。次もそのルートにしようと思っていた。
大村湾に浮かぶ空港は、周りの夜景に照らされて、光の国のようだった。湾に漂う多数の小島の間をすり抜けて、光の入場門を通過するように飛行機は着陸した。
 羽田の総合カウンターで予約していたレンタカーを空港で借りた和也は、車の少ない三十四号線を進んでいた。
車は彼杵から二百五号線に入って、ハウステンボスの脇を通り抜けた。そして、早岐から三十五号線に合流した。優希のアパートには、午後十一時少し前に到着した。

 和也は呼鈴を鳴らした。そして、ドアが優しく開いた。
優希は、D&Zのリブ編の黒い丸首Tシャツに、ライトブラックのデニムミニで、和也を迎えた。彼女は彼の顔を見て大喜びで両手を広げて彼に抱きついた。そして、彼女は軽く唇を合わせた。
優希は和也の手を引いて、キッチのテーブルへ通した。
 そして、和也は愕然とした。テーブルの上には、お約束のように優希スペシャルがライトブルーの煌きで、堂々と主役を張っている。彼は天国から地獄へと落ちた心持だった。
 腹が空いていたので、和也は仕方なく、スペシャルに手を付けた。しかし、以外にも美味いと感じた。腹が空き過ぎているせいなのか。そういえば、ビールも最初の頃、彼は苦く感じた。その苦味に慣れると、それが旨みのようになっていた。その料理はそれと同じなのかと彼は思った。そして、彼は二口目を口に入れた。やはり、不味かった。最初の一口は、彼の錯覚だった。
 食事が終わって、二人は奥の部屋に入って明かりを消した。そして、一ヶ月間溜め込んでいたものを爆発させるように、赤い光を互いに絡ませていた。その儀式は明け方まで続いて、二人は昼過ぎまで寝ていた。

 二人は車で西海橋に出掛けた。そこには、大村湾の外海との狭い出入口の急流に、大きく美しいアーチを描いて赤い橋が架けられていた。
二人は腕を組んで周辺の人の居ない遊歩道を歩いていた。そして、眺めの良いベンチに腰を下ろした。
優希は眉を揺らして嬉しそうに、
「ねぇ、和也。いい知らせがあるの」
「何だ、優希」
「あのね。また、出張が復活するの。来月から大阪なの」
「大阪か。ここより近いな。俺も出向くか」
和也は優しく優希の肩を寄せていた。
「えっ、本当。私、嬉しい。それとね。和也の、あの黒い車に、また乗りたいの」
優希は和也の耳元で、意地らしく頼み込んでいた。
「でもな。大阪まで、車を持っていくのは辛いぞ」
「私、恋人以上になってから、まだ、和也の助手席に乗っていないの」
優希の顔は真剣だった。
「はあ、さっき助手席に乗っていただろう。可笑しなことを言うやつだな」
和也は首を傾げて優希の顔を覗いた。
「違うの。レンタカーの助手席ではダメなの。ちゃんと、和也の車の助手席に座りたいの。ねぇ、いいでしょ」
優希は甘えるように和也の首を両手で、つかんでいた。
「ヨッシャー、分かった。車で大阪まで迎えに行こう」
「大好きだよ。和也」
 優希は喜んで顔を和也の胸に埋めていた。
和也も両手で優希を抱きしめている。そして、急流の渦潮は踊り出して、二人の対岸の木々達もゆっくりと秋風で葉を揺らしていた。何処からともなく、虫が鳴き始めて、秋の夕闇は静かに暮れた。

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テーマ : オリジナル小説
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