1カラットの奇跡 第九話 小悪魔のリローデッド(2)
和也は、保土ヶ谷バイパスを走っていた。そして、町田ICから東名に入って青葉を走っている。その道は空いており、彼は軽快に高速を楽しんでいた。車は用賀で高速を下りて、246沿いのコンビニの前で止まった。そして、和也は香織のマンションへ入った。
和也は香織の部屋のポストを探していた。三百二号室だった。彼は、スカートをそこに入れようとした。しかし、箱が大きすぎて無理だった。どうしようかと、少し思案をしていた。
女の手が、和也の肩を彼の後ろから叩いた。そして、彼はその手の方向に振り返った。そこには裕子が立っていた。いや、香織だった。
「あら、約束を守ってくれたのね。それ、スカートでしょう」
香織は嬉しそうに指をさしている。
「ああ、当たり前だ。自分のやったことに、きっちり責任を取るのが男だ」
「うっふ。格好がいいわね。でも、弁償というよりは、何か彼女に贈るクリスマスプレゼントみたいだわ。あっ、やっぱり、私に惚れているのでしょう」
香織は、また悪戯を始め出していた。
「おい、馬鹿を言うな。十一月に入ると、気の早い店は、皆こんな感じで包装をするものだ。町並みも、もう、そういう感じだ」
「いいのよ。照れなくても。折角来たのだから、中で、お茶でも飲んでいってね」
「いや、俺はここで失礼する」
「何だ。冷たいのね。でも、ここで帰ったらダメよ。試着してみないと、サイズが合うかどうか分からないでしょう。それが、確認出来ないと、弁償したことには、ならないわ」
「分かった。一杯だけ頂こう。後でごちゃごちゃ言われても、叶わない。俺も見届けて、すっきりしたいよ」
二人はエレベータで三階へ上がった。そして、薄暗い廊下を歩いて香織の部屋に入った。
和也は、六畳程のダイニングキッチンのテーブルに腰を下ろした。そして、辺りを少し眺めていた。何故か、部屋には生活感がなかった。物が少なすぎる。あるのは、電気ポットとコーヒカップくらいで、冷蔵庫も、テレビも、食器もない。それに、女性の部屋に特有の、可愛い飾り付けもない。香織は自炊しないのかと、彼は考えていた。
香織はコーヒを入れて和也に出した。そして、彼女は包みを持って奥の部屋へと消えた。
少したって、香織はそのスカートを身に着けてキッチンに戻った。
「どうかしら。ぴったりね。どうして、私のサイズが分かったの」
香織は少し驚いて、その場で一回りをした。
和也は調子に乗ってクールに、
「俺には、女を見る目がある。いい女のサイズは外さない」
「何か。嬉しいわね。益々好きになりそうだわ。私、決めたわ。優希に挑戦状を叩きつけるわ」
香織は両手を胸の前で握って、天井を見上げている。
それを見ていた和也は慌てて、
「おい、ちょっと待て。それは困る。もう勘弁してくれ」
「きゃっは、本気にしたの。冗談よ。すぐ、むきになるのね。二人とも。面白いわね」
香織は舌を出して、嬉しそうに大笑いをしている。
「それを聞いて安心した。俺は、もう帰る」
「まだ、ダメよ。何かを忘れていないかしら」
和也は目を丸くして、
「えっ、何だ?」
「スカートの弁償は終わったけれど、キスの償いは、まだ済んでいないわよ」
香織は小悪魔のように微笑んで胸をつんと出した。
「だから、あれは、何と言うか。勘弁してくれ」
「あら、自分のやったことに、きっちり責任を取るのが、男じゃなかったかしら」
香織は勝ち誇ったように、和也を見つめている。
「うむ、そうだ。俺はどうすれば、許してもらえるのだ」
「ちゃんと、私とデートをして。キスだけなんて、最低の終わり方をしたくないの。責任を取って、良い思い出に作り直してほしいの。そうでないと、私は絶対に許さないわ」
「分かった。責任を取ろう。それで気が済むのなら、付き合うよ。何時にする」
和也は無条件降伏をするしかなかった。
「そうね。月末の土曜日の朝、ここに迎えに来てちょうだい」
和也は静かに部屋を出た。その強引なデートの約束は、裕子との最初のデートの状況に似ている。それを思い出して、彼は懐かしさと悲しさで胸が一杯となっていた。その為に、彼には断ることが出来なかった。
和也は香織の部屋のポストを探していた。三百二号室だった。彼は、スカートをそこに入れようとした。しかし、箱が大きすぎて無理だった。どうしようかと、少し思案をしていた。
女の手が、和也の肩を彼の後ろから叩いた。そして、彼はその手の方向に振り返った。そこには裕子が立っていた。いや、香織だった。
「あら、約束を守ってくれたのね。それ、スカートでしょう」
香織は嬉しそうに指をさしている。
「ああ、当たり前だ。自分のやったことに、きっちり責任を取るのが男だ」
「うっふ。格好がいいわね。でも、弁償というよりは、何か彼女に贈るクリスマスプレゼントみたいだわ。あっ、やっぱり、私に惚れているのでしょう」
香織は、また悪戯を始め出していた。
「おい、馬鹿を言うな。十一月に入ると、気の早い店は、皆こんな感じで包装をするものだ。町並みも、もう、そういう感じだ」
「いいのよ。照れなくても。折角来たのだから、中で、お茶でも飲んでいってね」
「いや、俺はここで失礼する」
「何だ。冷たいのね。でも、ここで帰ったらダメよ。試着してみないと、サイズが合うかどうか分からないでしょう。それが、確認出来ないと、弁償したことには、ならないわ」
「分かった。一杯だけ頂こう。後でごちゃごちゃ言われても、叶わない。俺も見届けて、すっきりしたいよ」
二人はエレベータで三階へ上がった。そして、薄暗い廊下を歩いて香織の部屋に入った。
和也は、六畳程のダイニングキッチンのテーブルに腰を下ろした。そして、辺りを少し眺めていた。何故か、部屋には生活感がなかった。物が少なすぎる。あるのは、電気ポットとコーヒカップくらいで、冷蔵庫も、テレビも、食器もない。それに、女性の部屋に特有の、可愛い飾り付けもない。香織は自炊しないのかと、彼は考えていた。
香織はコーヒを入れて和也に出した。そして、彼女は包みを持って奥の部屋へと消えた。
少したって、香織はそのスカートを身に着けてキッチンに戻った。
「どうかしら。ぴったりね。どうして、私のサイズが分かったの」
香織は少し驚いて、その場で一回りをした。
和也は調子に乗ってクールに、
「俺には、女を見る目がある。いい女のサイズは外さない」
「何か。嬉しいわね。益々好きになりそうだわ。私、決めたわ。優希に挑戦状を叩きつけるわ」
香織は両手を胸の前で握って、天井を見上げている。
それを見ていた和也は慌てて、
「おい、ちょっと待て。それは困る。もう勘弁してくれ」
「きゃっは、本気にしたの。冗談よ。すぐ、むきになるのね。二人とも。面白いわね」
香織は舌を出して、嬉しそうに大笑いをしている。
「それを聞いて安心した。俺は、もう帰る」
「まだ、ダメよ。何かを忘れていないかしら」
和也は目を丸くして、
「えっ、何だ?」
「スカートの弁償は終わったけれど、キスの償いは、まだ済んでいないわよ」
香織は小悪魔のように微笑んで胸をつんと出した。
「だから、あれは、何と言うか。勘弁してくれ」
「あら、自分のやったことに、きっちり責任を取るのが、男じゃなかったかしら」
香織は勝ち誇ったように、和也を見つめている。
「うむ、そうだ。俺はどうすれば、許してもらえるのだ」
「ちゃんと、私とデートをして。キスだけなんて、最低の終わり方をしたくないの。責任を取って、良い思い出に作り直してほしいの。そうでないと、私は絶対に許さないわ」
「分かった。責任を取ろう。それで気が済むのなら、付き合うよ。何時にする」
和也は無条件降伏をするしかなかった。
「そうね。月末の土曜日の朝、ここに迎えに来てちょうだい」
和也は静かに部屋を出た。その強引なデートの約束は、裕子との最初のデートの状況に似ている。それを思い出して、彼は懐かしさと悲しさで胸が一杯となっていた。その為に、彼には断ることが出来なかった。
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