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1カラットの奇跡 第二話 出会いの細い糸(1)

 窓から漏れている朝日の中、和也の頭を突き刺すように、目覚まし時計が鳴り響いていた。ベッドから出た彼は、寝ぼけながら壁際にあるソファーに座った。そして、眠たい目を擦って、マルボロに火をつけた。煙がゆっくりと天井に上るさまを見ていて、その前日の出来事を思い出していた。彼は佳子を思い浮かべている。そして、ローンの契約書に銀行印をついて封筒に入れた。
 簡単に洗面を済ませた和也は、急いで通勤用の茶系のスーツに着替えていた。まだ、前日の酒が少し体に残っている。青いYシャツの上から、ペンダントを首にぶら下げて、黄色めのネクタイで隠すように締めた。

 自宅のマンションを出た和也は、朝の涼しい風を全身に浴びて、少し頭が覚めた。彼は会社に向って歩いている。若い緑の木々が生い茂っている公園を、彼は横切った。心地良い小鳥の囀りがしていた。そして、まだ人通りの少ない公園の傍らにあるポストへ、彼は力を入れて封筒を投函した。
 和也はそのまま歩いて、会社の手前にある何時ものカフェ喫茶に着いた。
 その店内の中央には、十人掛け程の大きな円卓がゆったりと置いてある。その円卓の真中からは、大きな木が天井まで艶やかに伸びていた。その木の広く楕円の緑の葉は、窓から差し込んでいる朝日で優しく揺れている。店内の客は、まだ少なかった。
 和也は、円卓の周りにある窓際の二人掛けの席に腰を下ろした。彼は窓の外の急ぎ行く人並みを眺めている。そして、静かに流れている店内のBGMを聞いていた。
 そのBGMは、弦楽器のまろやかでのんびりとした心地良い振動を奏でている。時折、ひばりが鳴くようにフルートが優しく囁いていた。
 和也は、ゆっくりとシナモンロールを齧って、ラテを味わっている。その優雅な空間を僅かに楽しんでいた。そして、八時少し前に、彼は店を出た。

 和也は出社している人の流れに乗って会社に着いた。そして、エレベータホール前で、既に制服を着ている裕子とすれ違った。
裕子は朝の日差しのように明るい声で、
「佐藤さん、おはようさんです」
「おお、おはよう。今度、バイクの乗り方を教えてやる」
「あっ、はい、よろしくです」
 裕子は、その前日のことを思い出して、密かに心を赤らめていた。そして、書類を抱えている彼女は弾むように歩いて去った。

和也は、居室へ静かに入って席に着いた。
その室内には、五十人くらいが座れる白い机があった。その全ての机の上には、液晶型のディスクトップのパソコンがあり、もう半分くらいの社員がパソコンに向かい黙々と仕事を始めていた。テンポ良くキーを叩くサウンドがBGM代りに、その室内を流れていた。
和也の席は、その部屋の北側の窓際沿いにある。その窓の外にはベランダがあり、タバコは、そのベランダで吸うことに決められている。それ故に、室内は禁煙だった。
和也は窓に背を向けて座っている。彼の向かいの席は浩二の席だった。しかし、浩二の姿は、まだ、そこにはなかった。
和也の席の右側は通路だが、彼の右斜め前方の2メートル先には、偉そうな黒い大きな机があり、課長が無愛想に新聞を広げていた。
和也はプレゼンの資料を広げて、ゆっくりと仕事を始めていた。
少し遅れて、浮かない顔をしている浩二が、現れた。そして、彼の表情からは、前日の万馬券の余韻は、もう消えていた。
「浩二、どうした。あれから、理恵とうまくやったか」
「つめを早まり、顔を叩かれました」
「お前、何をやった」
「いや、もう、勘弁して下さいよ。ノーコメントです」
 浩二は書類で机を軽く叩いて、仏頂面で席を立ち去った。
和也は少し笑って壁の時計に目をやった。そして、資料の手直しを急いで再開した。彼は、それ以上は浩二を構っている暇がなかった。
何故なら、その日の午後に、和也はクライアントに、その資料でプレゼンをする予定だった。だが、まだ仕上がっていないからだ。

 和也は、佳子からの電話を待っていた。しかし、その週は連絡が無い状態で、週末を迎えた。ベイブリッジの話は、担がれたと思い始めている。
その週の土日は、何時ものように、桜木町へ向った。そして、和也の成績は、勝ちもせず、負けもせず、不完全燃焼な状態で終わっていた。

 その翌日の月曜日の昼過ぎ、和也は会議室で他の主任達五人と定例ミィーティングに出席していた。
その会議室は、八人が座れる小部屋で、エレベータホールの脇にあった。そして、課長は、どうでも良い事務的な連絡事項を話し始めていた。
そのとき突然、GⅠファンファーレの着メロが、会議室中に響き渡った。そして、課長が、和也を睨んでいた。
和也はそれを無視して会議室を出た。そして、電話を取った。
「山村です。約束を覚えていますか」
 和也の心は踊っていた。心待ちにしていた佳子からの電話だった。
「ああ、覚えている」
「夜七時に、横浜のレッドスターホテルまで、車で迎えに来て下さい」
「ヨッシャー、わかった」
 淡々と待ち合わせ場所を伝えた佳子は電話を切った。
和也は課長の怒っている視線をそらして席に戻った。そして、佳子の姿を思い出して、会議の終わりを待っていた。

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