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ルビーの気まぐれ 第一話 魅惑のルビー(2)

 美奈子はデパートを出たところで、男を見失った。辺りをキョロキョロする。人が多く、どっちに行ったのか分からない。ため息をつき、歩道の端で輝いているピンクと白のグラデーションのはなみずきの花を見つめた。男はたぶん会社に戻れば会える。走ったからかなり息が荒かった。足も痛い。少し色彩観察をして、息を整えようと思った。
美奈子の背後では、授業が終わった女子高生たちが流行の映画の話に花を咲かせて通り過ぎている。金曜の夕方は普段よりも人が多く、営業を終えたサラリーマンも歌舞伎町に向かって素通りした。
野山の中にいるような感覚で、天然色で彩られた木を見上げ、美奈子だけが口を優しく広げる。瞳を大きくさせ、一枚一枚の花の微妙な色彩の違いを楽しんでいた。スタールビーに愛着を持つ美奈子は、同じ色のピンクのものにはすぐに興味を抱くことが多かった。
 夕暮れの暖かい春風が街路樹の新芽の香りを運んで、美奈子の長い髪を心地良く揺らしていた。美奈子は両手を伸ばし、新緑な空気を大きく吸い込んだ。
 突然、後ろから肩を叩かれた。びくっとしながら、美奈子は振り返った。顔を強張らせ、心臓の鼓動も早くなり、反射的に一歩二歩と後退った。
黒いローブを身に着けた魔術師風の老婆が立っている。シワだらけの顔の中にぎろっとした目玉を浮かべながら、三角帽も被っており、どこから見ても怪しい。TVゲームのRPGに登場するような定番のキャラのようで、リアルな世界には存在するはずがない。老婆はおかまいなしに一歩二歩と前に出てくる。
両手を広げながら、美奈子は更に後退ろうとした。でも、背中にはなみずきの幹がぶつかるのを感じた。パニック気味の脳は大量のアドレナリンを放ち、美奈子の両足に火事場の馬鹿力を与えている。はなみずきの木がミシミシと悲鳴を上げているのが、可哀相なくらいだった。
老婆は美奈子の胸元にグーの右手をさっと突き出した。
美奈子は心臓を打ち抜かれてしまうのではないかと思い、大きく目を見開きながら懸命に両手で老婆の右手をつかもうとした。
にやっと笑った老婆は右手をぱっと開き、美奈子の両手にティッシュを渡した。くるっと反転すると、歩道を歩いているOLにもトコトコと近寄り、ティッシュを配った。
 美奈子の息は荒く、両足を踏ん張ったままだった。でも、何かほっとした。深呼吸をしながら、美奈子はティシュの裏を眺めた。
『あなたの恋、かなえます! 占いの館ブラッククリスタル』と、書かれており、映画館先の路地を右に入れという赤い矢印の地図も描かれていた。
美奈子は少し笑みを浮かべ、ティッシュをポケットにしまい込み、駅に向って歩き出した。

 美奈子はまた足を止めた。地図に描かれていた映画館が目に入ったからだ。けれども、占いは止めておこうと思った。やはり、プロデューサーの顔が頭の中に浮かんだ。でも、映画館の看板には目が釘付けになった。
『1カラットの奇跡』映画のタイトルだった。
確か、原作は読んだ。恋愛物で、ダイヤモンドのペンダントが、クライマックスでヒロインを生き返らせる話だった。
(あの人と見られたら、どんなに楽しいかしら。どうせなら、指定席に二人並んでゆっくりと見たい。暗闇で、手を握ってくるかもしれない)
そんなことを期待しながら顔を赤くし、美奈子は一人でにやつく。
(でも、あの人とはそんな関係ではないわ。心に秘めたまま。思い切って、打ち明けてみようか。ダメ! そんな勇気はない。女から切り出すのも何か変よね)
 美奈子は激しく首を何回も横に振った。振り返りながら美奈子の脇を通り過ぎる通行人には気づかなかった。
(けれども、原作の物語の中では、ヒロインたちが主人公の男性に積極的にアプローチしていた気もするし。私もそうなれたら、どんなに気が楽になるかしら)
美奈子は下を向き、歩道に落ちている桜の花びらを見つめた。
(そうよ、指定席券をお友達から二枚貰って困っているとかいうのは、どうかしら。流行の映画を見ることは、あの人が手がけている映画館系のWEBサイトのデザインにも何か役立つはず。仕事をダシに使えば、なんとかなるかもしれない。ダイヤモンドヘッド突撃作戦と名づけようかな)
もう一度、美奈子は看板を見上げて頬を膨らませた。
(ちょっと甘いかもしれないな。でも、完璧な計画では可愛らしさが足りない気もするし。少し抜けていた方が女らしいと思う。最後は笑ってごまかすという手もあるはず。やはり、自分から何か仕掛けてみないと、いつまでも切ないまま・・・・・・)
 美奈子は両手で頬を軽く叩くと、映画館の窓口に並んだ。五千円をはたき、翌日の十五時からの指定席券を二枚買い、白いキャンパス地に、ブルーのロゴ文字が入ったトロッター柄の、ダブルサドルのハンドバックに大事そうにしまい込んだ。美奈子はスキップを踏みながら駅へ歩き出した。

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テーマ : オリジナル小説
ジャンル : 小説・文学

Keyword : 小説 恋愛 ルビー

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夢野広志(むのひろし)

Author:夢野広志(むのひろし)
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オリジナルの恋愛小説を書いています。
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