FC2ブログ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

1カラットの奇跡 第二話 出会いの細い糸(3)

 和也は、大黒パーキングでUターンをした。再び、ベイブリッジを通り過ぎて、新山下のランプで降りた。そして、右に曲がった所にあるシーフードレストランに入った。
 倉庫を改造して作ったレストランの店内は、広大で高さがあり、異国のリゾートの雰囲気で飾られていた。スーパーダイニングの大きなテーブルには、数々の東南アジア系の料理が出されていた。海外の気分を思わせる店内の景色と香りが、三人を優雅な世界へと連れ出していた。
 三人は、広く客の多いフロアーを通り抜けて、屋外のテラス席に座っている。テラスからは、サファイア色に輝く、大きく荘厳なベイブリッジがあった。橋自体を楽しむのなら、そのレストランから望む眺めが最高だった。
 和也は店員を呼んだ。そして、メニューを見ずに、その店自慢のコース料理をオーダーした。女達は、ベイブリッジの優しい美しさに魅了していた。
暫くして、料理が運ばれていた。三人は、海老、ズワイ蟹、真鯛、ロブスターと、シーフード系のメジャーな素材を独特の香りと味付けで堪能していた。
 優希は黙々と料理に目を輝かせて、食べることに夢中になっていた。彼女を黙らせるには、食べ物を与えておけば良かった。
佳子は優希とは対象的に、女らしく上品に少しずつ食を進めていた。そして、彼女は和也に礼を言った。
「佐藤さん、本当においしい料理ですね。この店は、良く来るのですか」
「ああ、プロジェクトの打ち上げで、良く使うのだ」
「あの! 佐藤さん。さっきは、面白いだけの人かと思いましたが、素敵なところもあるのですね。このオシャレなお店に感激しちゃいました。大見直しですね」
「優希、あなたね。面白いだけなんて失礼でしょう」
「は~い、ごめんなさい。メンゴです」
 優希は、食べるものが無くなると、オマケの身分を忘れて、口を出していた。
佳子は優希を抑えて、自分達の話を始め出した。
和也は、ココナツミルクのデザートを蓮華で啜って、彼女の話に耳を傾けていた。
 二人は佐世保の出身で、高校時代の先輩と後輩の仲だった。ミステリー研究会というクラブ活動をやっていた。その後、地元の短大に進んで、佳子は横浜の宝石販売の会社に就職した。
優希は地元でアパレル販売の仕事をしている。月一回のペースで、横浜の系列店に研修販売で訪れていた。横浜に来たときは、佳子の案内で、優希は夜の時間をたまに楽しんでいた。
 話が終わって、佳子の携帯が鳴った。彼女は、軽く会釈をして、席を離れた。そして、席から遠いテラスの縁で電話に出ていた。
和也は電話の相手が少し気になって、時折、テラスの縁を眺めていた。

 優希は佳子がいなくなったので、瞳を潤ませて甘えるように、
「あの、佐藤さん。よかったら、名刺を頂けませんか」
「えっ、良いだろう。こんなもの、いくらでも上げよう」
 和也は裏に携帯の番号が書かれている名刺を優希に渡した。
優希は眉を広げて頬を薄っすらと染めて下を向いた。
「ありがとうございます。それと私を忘れないで下さいね。二人のうち、若い方と覚えておいて下さい。また、来月も美味しいものが食べたいです」
 何となく、優希の目的を感じ取った和也は、トーンを落として、
「そう、おいしいものか。そうか。そうだな」
 それから、優希は笑みを浮かべて、少し馴れ馴れしいように、
「何か、元気ないですね。あっ、お佳さんがいないからか。でも、あの人に恋をしてはダメですよ。大やけどをしちゃいますよ。何てたって、もうすぐ人妻だから。来月、佐世保で式を挙げるのです」
 和也は驚いて、力が抜けて蓮華を床に落とした。
「えっ、そうなのか。そうか・・・」
 優希は、残念がって落ち込む和也を励まして上げたいと思った。そして、その隙に何とか自分のことを彼に売り込んで印象を残しておきたかった。和也の不器用で、少し変人ぽい特徴的なキャラが、それまでに出会ったことが無い新鮮さを感じて、優希の心を引き込んでいた。
 優希は頬を広げて笑顔を作って、
「そんなに、落ち込むことはないですよ。あっ、そうだ、佐藤さんに幸運をプレゼントして差し上げますね」
和也は何だろうと耳を傾けていた。
優希は太陽のように大きな笑みを浮かべて得意な顔をして、
「心の中で、一から九までの数字から一つを選んで下さい。声には出さないでね」
 和也は、何か前にも同じようなことがあったなと思ったが、三を思い浮かべていた。
「それでは、それに九を掛けて下さい。その答えの一の位と十の位を足して、それから二を引いた数字を頭の中で強く念じて下さいね」
 和也は計算した答えの七を、頭の中で強くイメージしていた。
「佐藤さんの頭の中には、七が支配していますね。つまりラッキーセブンがやって来たでしょ。これが、私からの幸運な贈り物です」
 優希はお茶目な笑い顔で、暖かい瞳を和也に送っていた。
和也は驚いて目を見開いたまま固まっている。
「あっ、そんなに驚かなくても大丈夫です。私は魔女ではないので、心配しないで下さい。これは、ミステリー研のときの簡単なネタなのです。九の段の掛け算は、全て一の位と十の位の答えを足すと九になるのです。それから、二を引くと必ず七になるのです。どうです、宴会のネタでは面白いでしょ」
 優希は和也の顔を覗いて、無邪気に笑って話した。
和也は佳子からペンダントを買ったときのことを思い出して、顔を曇らせていた。

 電話が終わって、佳子が席に戻った。
優希は少しニヤニヤして、
「電話、森川さんからでしょう。いいな~、幸せな人は!」
「何、何を言っているのかしら。この娘ったら」
 佳子は少し動揺して和也に取り繕うとしていた。
優希は調子に乗って、
「あっ、大丈夫。来月に式を挙げることを話したから、もう隠すことはないです」
 佳子は怒った口調で、
「優希、人のプライバシーをペラペラと、話すことはないでしょう」
「いいでしょ。お佳さんは、幸せだから」
「ところで、二人で何を話していたの。あっちから見ていて、とても楽しそうでしたよ」
「ミステリー研の九の掛け算のネタだ。とっても面白い話だったぞ!」
 和也は佳子を睨めつけて、皮肉を込めて話した。そして、強張った笑顔を作っている。
佳子は少し顔色を変えて慌てた。
「あっ、先の電話は会社からなのです。急用で戻らないといけないので、これで失礼します。優希、後は、お願いね」
「えっ、ラッキー! 佐藤さんと二人きりだね。後は、お若い二人で、だね」
 佳子の逃げ足は早かった。混雑した店内をすり抜けるように姿を消した。優希の無邪気に見つめている可愛い瞳が、和也の追いかけるタイミングを奪った。和也は、逃げた佳子より、残っている無防備な獲物をどうしようかと考えていた。

 それから、和也は優希と暫く話していた。彼は佳子のことを優希からくわしく聞き出した。佳子は桜木町に住んでおり、WINSと近くのパチコン屋に良く出入りをしていた。彼はあの赤い帽子の女だったのかと、やっと気がついた。彼は腹が立っていた。だが、自分の未熟さを恥じていた。
 しかし、優希は佳子の仕事のことをあまり知らない。優希が知っていることは、普通に宝石を売っていることだけだった。
 佳子の話ばかりなので、優希は面白くなかった。和也は優希のことを聞きもしなかった。しかし、彼女は自分のことを話し出した。
優希は、小さいときに事故で父親を亡くした。父の思い出は、唯一つぶっきらぼうという印象しか覚えていなかった。
優希は、思春期のときに歳の離れた男性に無意識に引かれる傾向があった。ファザコンの一種だった。それとぶっきらぼうな和也が、父のイメージと重なっていた。それ故に、彼女は初対面でも和也に親近感を感じて、無防備なところを見せていた。
 和也は、どうしようかと考えていたが、奇跡を呼ぶと言われて、ダイヤのペンダントを購入したことを優希に打ち明けた。騙されたことを非常に恥じていたが、誰かに話をしなければ、居た堪れない心境だった。
優希は噴出して大笑いをしていた。しかし、あんな幼稚なカラクリを信じ込む和也の純真さに、魅力を感じ始めていた。あまりにも、落ち込んでいる彼を、優希は励ましたいと思った。
「佐藤さん、お佳さんも、悪気があった訳ではないと思います。ギャンブルで負けて、落ち込んでいる佐藤さんに、元気を与えたかったのです。それで、ダイヤに、夢の話を付け加えただけだと思います。あの人は、そういうファンタジーな人だから。信じて上げて下さいね」
「でもな、そういう感じでは、無かった」
「でも、ダイヤは本物なのでしょ。本当にインチキなものなら、鑑定書なんかつけないと思います」
「それは、そうだ。しかし、何かやりきれない」
「あっ、それ、多分、奇跡の力がありますよ。大丈夫です」
「えっ、突然、何だ?」
 優希は少し恥じらって、やや下を向いた。
「だって~、私、こうして、素敵な佐藤さんと出会えました。こっちに来たときは、私、お佳さんしか知り合いがいないので、何時もこの時間は、ホテルの窓から、下を走る首都高の明かりを、ぼんやりと見つめていました。いつか素敵な男性と、あそこをドライブしたいと、憧れていたのです。今日、その夢が叶ったのです。私にとっては、その石は奇跡のダイヤなのです」
 和也は自然に噴出して笑った。しかし、ラブストーリーに憧れるその年頃のロマンチックな純真な乙女の思いに、和也は心を洗われていた。何か、そのダイヤが、奇跡の石のようにも思えていた。
もともと、このストーリーは、ギャンブルから始まったものだから、ギャンブルで二百万負けたと、思えば気持ちも安らぐ。真のギャンブラーには、負けの現実を受け取る器が整っている。そうでないと、次の勝負には決して勝てない。
 それに、優希との出会いは奇跡のような確率だった。ダイヤを佳子から購入した。お局様に嘘をついた。合コンに無理やり参加した。ギャンブルで大敗した。それらの一つでも、欠けていれば、和也の前には優希が居なかった。
 人の出会いとは、不思議なもので、数多くの細く小さな赤い糸が繋がって、その人と巡り会える。しかし、その出会いを大切にしなければ、簡単に切れてしまう。
和也は、優希との奇妙な出会いを大切にしたいと思った。もはやダイヤのことはどうでも良いと考えた。
 それから、優希は彼女の専門分野のアパレルの話をしていた。彼女はD&Zというブランドが大好きだった。彼女の店も、それを主力で扱っていた。そのブランドの服や小物類の良さを、彼女は目を光らせて熱心に説明していた。
 和也は、良く分からない話だったが、彼女を見つめて優しく相槌を打っていた。
二人は閉店まで話を続けた。その頃には、優希はすっかり和也に打ち解けていた。和也には少し戸惑いがあった。十以上も年下の若い女とは付き合った経験もなく、扱いに少し迷いを感じていた。

 和也は、優希を助手席に乗せて、首都高を走っていた。優希は、無防備にも助手席で安心しているように寝ている。
普通、初対面の男の車の中で、眠る若い女はいない。何らかの警戒心はあるものだった。
 優希は、まるで父親の車にでも乗っているような顔で、安らかに眠っている。
それを見ていた和也は、狼な気持ちを抑えて、素直に横浜のランプで降りた。優希とは、綺麗な出会いとしたかった。
 車は、もう人通りの無くなったレッドスターホテルの前に到着していた。和也に起こされた優希は、辺りを見回して、レッドスターホテルの前だと気がついた。
「なんだ~、つまらないの。本当に送ってくれたのね」
「つまらないは、無いだろう。送ってやったのだから」
「どこか、あやしい場所にでも連れて行かれたら、どうしようと、半分期待していたのに」
「あやしい場所とは失礼だな。俺は紳士だ。そんな所には行かない。でも、これから行くか」
「あっは、冗談です。もう、可愛いね。本気にしちゃって。ありがとうございました。来月の出張で、必ず連絡します。それまで忘れないで下さいね」
 優希は弾んで軽い会釈をして、和也の車を降りていた。何回か手を振って、踊るようにホテルの入口に消えた。車の中から優希を見送った和也は、ギアを入れて軽快に走り去った。
ホテルの入口の明かりは、二人の余韻を包み込むように薄っすらと夜の歩道を照らしていた。

Tiffany(ティファニー) ダイヤモンド バイ ザ ヤード ピアス 10ct 18Y 12818653

Tiffany(ティファニー) ダイヤモンド バイ ザ ヤード ピアス 10ct 18Y 12818653



ネット小説ランキングに投票 恋愛ファンタジー小説サーチ オンライン小説検索・小説の匣へ
スポンサーサイト

テーマ : オリジナル小説
ジャンル : 小説・文学

Keyword : 小説 恋愛 ダイヤモンド

コメントの投稿

Secret

プロフィール

夢野広志(むのひろし)

Author:夢野広志(むのひろし)
小説の夢見へようこそ♪
オリジナルの恋愛小説を書いています。
不思議な宝石の物語を掲載中です。

目次
リンク
最新記事
最新コメント
最新トラックバック
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

RSSリンクの表示
ランキング
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。