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ルビーの気まぐれ 第四話 ハットトリックをGETせよ!(5)

 美奈子は無我夢中でゴール前まで走った。山中の傍に近寄り、涙を零しながら何度も山中の名前を呼んだ。
 サイレンを鳴らした救急車がグランドに入って来た。山中の周りに集まっている人の山をかき分けて、救急隊員がタンカを運んで来た。手際良く山中の体をタンカに乗せると、車内へ運び込んだ。
 間髪入れずに、美奈子も車に乗り込む。山中の右手をつかみ、傍に寄り添った。女子マネジャーが困った顔をしながら車の中に入り、声を掛けた。
「あの、部外者の方は下りて頂けないでしょうか。私が付き添いますから」
「部外者ではありません。大事な彼なのです!」
 般若のような形相で、美奈子は女子マネジャーを睨みつけた。山中から離れたくなかったので、思わず口走った。そうでも言わなければ、つまみ出された。
 女子マネジャーは美奈子の迫力に押されたようで、後退りをしながら車を降りた。ドアの近くに集まった女子社員たちからは、大ブーイングの目線を送り込まれている。人の山の後ろには腕を組んで悪魔の叫びのような顔をした佳代が睨みつけていた。
 救急隊員がドアを急いで閉めると、車はサイレンを轟かせながら、フルスピードで走り出した。

 治療を終えた山中は病室のベッドの上で、死んだように横たわっている。頭には白い包帯を巻いており、黄色い点滴の雫がポタポタと左腕の中へ流れ落ちていた。窓の外では夕立が降り出し、薄暗い影が病室を包み始めた。
 医師いわく、軽い脳震盪で特に異常はないそうだ。一時間もすれば意識は戻るだろうと、当直の若い産婦人科医は言っていた。
 美奈子は少し気掛かりだった。一時間以上は経過している。でも、山中の意識は戻る気配がない。外科医をどこからか探してきた方が良いのだろうか。胸の早い鼓動を両手で押さえ込みながら、山中の顔をじっと見つめた。
 待ち兼ねた美奈子は、ルビーを使ってみることを思いついた。効能は少し違うような気もしたが、不思議な力があるのだから、何とかなるだろうと考えた。兎に角、何もしないよりはマシだ。そう思った美奈子は右手を大きく頭の上に振りかざした。
(マズッ、光がないわ。肝心なときに役に立たないのね。蛍光灯のスイッチはどこにあるのかしら)
 美奈子が辺りをキョロキョロと見渡したとき、突然、地吹雪のような雷鳴と共に稲妻が窓の外から飛び込んできた。稲妻はルビーに当たり、ルビーは大きく輝き始めた。
 ルビーから伸びた一本の赤い糸が山中の体をくるくると巻き始め、全身を繭のように包み込んだ。赤い繭からは蛍火のようにほのかな光が漏れていた。雷が鳴り止むと、すうっと繭が消えた。
 すると、山中が目を開けた。じっと天井を見つめながら、顔を強張らして渋い表情を浮かべていた。
「あー、良かった。死んでしまうのかと思ったわ。いつまで経っても起きないから」
「ボールはどうしたの?」
 真剣な眼差しで、山中は美奈子の顔を見た。
 美奈子は潤んだ瞳を輝かせながら山中の顔を覗いた。
「大丈夫。ちゃんとゴールしたわ。私、嬉しい。ありがとう。本当に格好良かったね」
「格好は良くないさ。こんなザマだからね」
 山中は美奈子から目をそらし、浮かない顔をしていた。
 美奈子は静に首を小さく横に振った。
「勝ちは決まっていたのだから、あのゴールは私へだけのプレゼント。だから、私のナイトなの」
「また、お姫様ごっこ?」
 腹を揺らしながら、山中は笑っていた。
 美奈子は頬を膨らませ、耳を赤くした。
「もう、茶化さないの! 素直に褒めているのだから」
「だったら、ご褒美にビールがほしい!」
 山中は勢い良く上半身をベッドの上で起こした。右手を前に差し出すと、美奈子の顔を覗き込んだ。
 美奈子は溢れるように笑みを零し、山中の右手を軽く叩いた。
 二人は見つめ合った。自然と唇を重ね、お互いを抱きしめた。
 窓の外では夕立が過ぎ去り、暖かい風が流れていた。月も昇り始め、優しい光が病室を包み始めていた。

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テーマ : オリジナル小説
ジャンル : 小説・文学

Keyword : 小説 恋愛 ルビー

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夢野広志(むのひろし)

Author:夢野広志(むのひろし)
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