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ルビーの気まぐれ 第四話 ハットトリックをGETせよ!(6)

 火曜日の午後は晴れだった。四十六階から眺める空は、静かな摩周湖の水面のように雲一つない青さが広がっていた。遠くに見える富士は白い帽子を空に浮かべたようだった。
 美奈子とオヤジは前と同じ会議室に通された。佳代が来るのを待ちながら窓外の天の国の風景を眺めていた。
 美奈子は窓際の壷に、ちらりと目をやった。取っ手がついている。念の為、目を擦り、もう一度見た。取っ手は両側に健在で色や形も前回の壷と同じだった。美奈子は中腰で壷の取っ手を興味深く覗き込んだ。
「美奈子! 手を触れるな。前回のことを忘れたのか」
「あの、不思議なのです。元に戻っているのです」
「本当か? それは良かった。どれどれ」
 二人の後ろでドアの開く音が聞こえた。
「その壷に手を触れないでくれるかしら。取っ手を誰かに壊され、復元したばかりよ。バブルの頃、一億円で購入した高価な壷だからね」
 佳代の大きな声が聞こえた。
 二人は素早く一歩下がり、顔を引きつらせながら振り返った。挨拶を言うと、にぶい笑顔で深く頭を下げた。
 美奈子は全身から冷や汗が噴出した。何故、そんな壷が一億円もするのかしらと、疑問に思った。それより、バレたらことだ。人生が終わってしまう。そう考えると、足元がすくみ、顔が真っ青になってきた。
 佳代の後ろから山中と広報部長が入ってきた。広報部長はオヤジと同じくらいの年齢だったが、スーツの着こなしも良く、太陽と月以上の差があった。
「紹介致します。私の上司で部長の野中と申します」
 営業的な口調で、佳代は軽く流した。
 美奈子とオヤジは頭を下げながら部長と名刺を交換した。
 佳代は山中を指して事務的な笑顔の上に嫌味な目を載せ、美奈子の顔を覗き込んだ。
「そして、隣は、あら、伊藤さんはご存知よね。彼氏なのだから、紹介するまでもないわ。吉村さんにご紹介します。開発部の主任の山中と申します。今回の商品の担当です」
 頬を広げながら、山中は白い歯を零した。
 オヤジは目を丸くして美奈子の顔を覗いた。
 美奈子はうつむき、顔から溶岩を噴き出してしまうくらいに、真っ赤になった。
「お座り下さい」
 佳代は美奈子を鋭い目つきで睨みながら、右手でソファーを勧めた。
 皆は大理石のローテーブルを囲んで腰を下ろした。
 オヤジは美奈子の顔をチラチラ見ながら鞄から企画書とサンプルデザインを取り出し、クライアントに配った。
「この度は、ご提案の機会を頂き、御礼を申し上げます」
 奥歯にものが挟まったような顔をしながら、オヤジはプレゼンを始め出した。
「ターゲットが若い独身OLということで、全体的に南国の島をイメージの中心に置きます。キラキラと輝く海の上に、小さな無人島を浮かべます。島にはサボテンに実っている黄色いピタヤを並べ、神秘性を表現します。手前にはカップルが手を繋いで楽しそうに歩くシルエットを添え、ラブロマンスも演出します。そして、島を包み込むようにイルカを水面から飛び跳ねさせます。口にはピタヤ大福をくわえさせ、笑顔で微笑みかけるのです。イルカはフリピタくんと名づけてキャラクターとして展開します」
 オヤジは頬を大きく広げ、サンプルデザインを左手で掲げながら向かいの三人に見せていた。
「ダメ! イメージが全然違うわ。もう一度やり直して頂戴」
 目をつり上げて首を大きく横に振りながら、佳代は厳しい表情で美奈子とオヤジを睨んでいた。
「恐れ入りますが、具体的にどのへんが、お気に入らないのでしょう」
 オヤジは冷や汗を抑えながら佳代に聞いた。
「全体的に明るすぎるトーンで謎を感じないわ。それに、イルカの絵が可愛くないの」
「そうかな。イルカはいい感じだと、思うけれどな」
 右手を顎につけながら、山中は口を開いた。
 佳代は横を向いてきつい目つきで山中を睨んだ。
「プロモに素人の貴方は黙っていてくれる!」
「おいおい、それはないだろう。黙っていたら会議に出席している意味がないじゃないか。オレは開発担当なのだから、意見を述べる権利がある。大体、お前のそういう態度は誰も好かんし、良くないぞ!」
 山中は顔を大きくして唇を尖らせていた。
「何よ! その女に仕事を出せって貴方が言うから、出して上げたのでしょう。開発担当の権利はそれまでで十分よ。私は嫌いなものは気に入らないの!」
 顔を崩した佳代は、美奈子を右手で強く指さしていた。
 美奈子は胸をドキドキさせながら下を向き、両手を膝の上で合わせ、体を小さくした。
「木村くん! 少し落ちつきなさい」
 慌てて、部長が割って入った。
「見苦しいところを見せて申し訳ない。私はこの企画で良いと思う。我社の商品イメージを的確に捉えている。ただ、海は夕暮れの海にして背景のトーンは少し落とそう。イルカはもう少しアニメチックで明るさを全面に出したほうが良い。そういう感じで、サンプルデザインを書き直して下さい。それと、木村はこの企画から外すので、以後は山中に提出して下さい」
 部長は優しい笑顔で美奈子に微笑み掛けていた。
 怒った佳代が身を乗り出して部長に噛みついた。
「部長、ちょっと待って下さい。どういうことですか。私を外すって!」
「君は商品を見ていない。胸に手を当てて考えなさい。理由はそれだけです」
 佳代は固まって生気をなくしていた。廃人のような表情で首を下にうな垂れていた。空気が抜けた風船のように、体がどんどん萎んでいくようだった。
 美奈子は顔を上げ、頬を揺らしながら山中の顔を見つめた。背筋を伸ばし、胸が弾んできた。
 山中は口から白い八重歯を零しながら、右手の親指を立てて前に突き出していた。
 窓の外では、青い富士が大きく輝いて美奈子の仕事に驚いたように白い帽子を脱いでいた。

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Author:夢野広志(むのひろし)
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