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ルビーの気まぐれ 第六話 奇跡のランプチャンス(4)

 二人は美奈子のアパートに着いた。
 部屋に入り、玄関脇のバスルームの前で美奈子は山中にピンクのバスタオルと着替えを渡した。着替えは白いTシャツと青いチェックのパンツだった。スロットの儲けで急遽スーパーで調達したものだった。
 先にシャワーを浴びるように言うと、美奈子は奥の部屋に入った。ピンクのタンクトップと黒いショートパンツに着替えた美奈子は、キッチンでスーパーの袋から木綿豆腐を取り出す。静に豆腐をマナ板の上に載せ、鼻歌を歌いながら包丁でゆくっりと四角に切り始めた。
 山中がシャワーから出てくると、ゴマ油に豆板醤と山椒の香りが流れ出していた。三つあみを編むように絡み合いながら、山中の鼻をくすぐった。山中はキッチンの白いテーブルに腰を下ろし、美奈子の後姿を静かに見守っていた。
 美奈子は茶のどんぶりに湯気の脇上る銀色のアツアツのご飯を盛り、山中の目の前に置いた。フライパンの火を止め、持ち上げ、どんぶりの上空まで運ぶ。黄金色のあんをお玉ですくい上げると、山中にちらっと目をやり、頬を揺らした。ご飯の上にあんをかける。麻婆丼だった。白い煙に混じりながら香ばしい風が踊り狂うように山中の鼻を誘った。
「美味しそうだね」
「私の得意料理よ」
 美奈子は胸をつんと出した。
 からかうような表情を浮かべ、山中は細い目で美奈子を見た。
「料理って、豆腐を切っただけだろう。麻婆豆腐の素っていう空き箱が流しの上に見えるよ」
「いいの! その方が安全でしょう。それとも、美味しく出来る確率がランプチャンスと同じな、私の味にチャレンジする?」
 美奈子は右手でスプーンを立てながら体を前に乗り出し、鋭く目を光らせながら山中の顔を覗き込んだ。
 顔を引きつらせながら、山中は身を引いた。
「いや、ランプチャンスなら止めておくよ。BIGでも怖い。小役くらいならいいけれど」
「だったら、おとなしく食べなさい!」
 高笑いを浮かべながら、美奈子はスプーンを山中の顔の前に突き出した。
 山中はスプーンを取ると、美奈子の機嫌を取るように、美味い美味いとうなずきながら麻婆丼を貪った。
 美奈子も満足そうに頬を零しながら麻婆丼を食べ始めた。
 食事が終わり、食器を洗い終えた美奈子はシャワーを浴びた。髪を簡単にドライヤーで乾かし、ポニーテールに結んだ。鏡を覗きながら念入りに化粧をし直した。ピンクのバスタオルを胸から巻き、モデルのように背筋を伸ばしてバスルームを出た。
 山中はスポーツ新聞をテーブルに広げ、サッカーの欄を見ていた。オリンピック代表選手のインタビュー記事を読みながら缶ビールを飲んでいる。美奈子に気づいた山中は顔を上げた。眉を緩め、白い八重歯を光らせながら美奈子を見た。
 パサっと、美奈子はバスタオルを床に落とし、微笑みながら山中の瞳を見つめた。そっと山中の右手を取り、奥の部屋に連れ歩いた。
 二人は薄暗い布団の上で激しく交わった。一ヶ月ぶりの思いを、お互いの体で伝え合うように波動を交換した。放電が終わった二人は、布団の中で暫く寄り添っていた。
「ねえ、啓太は東京で暮らさないの?」
 美奈子は山中の体にしがみつきながら優しく囁いた。
 山中は美奈子の頭を撫でた。
「真っ白な雪がないとな。それに、実家は小樽の街で小さなケーキ屋をやっている。長男だから何れ継がないとな」
「そういうことなの・・・・・・」
 美奈子は山中の胸に軽く左手のツメを立て、小さく回した。
 山中は美奈子の左手の手首をつかんだ。
「だが、雪はいいものだよ。どんなときでも、心を真っ白にリセットしてくれる」
「私のことも?」
 体を乗り出し、美奈子は真上から山中の顔を覗き込んだ。
 山中は眉を揺らしながら美奈子を見つめた。
「それはないな。リセットするのは気分で、記憶ではない」
「良かった。私も雪、好きになれるかな?」
 美奈子は両手で山中の頬をつかみ、唇を吸った。
 山中は両腕で美奈子を優しく抱きしめた。
「なれるさ」
「でも、ちょっぴり心配」
 美奈子は山中の目尻を左手で触りながら瞳を見つめた。
 山中は美奈子の髪を優しく撫でた。
「そう焦らなくても、いいさ」
「まずは、クリスマスね。私、頑張ってみる」
 美奈子は山中の胸板に顔をうずめ、山中の心臓の鼓動を聞いた。
 山中も美奈子の背中を優しく摩った。
 真夏の夜は深まり、車の音も消え、外は静かになった。クーラーのファンの音だけが微かに聞こえる。涼しいファンの音色を子守唄にしながら二人は幸せそうな顔で眠りに入った。暗闇の中にぼんやりと、美奈子の指でルビーの赤い光が灯っていた。

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テーマ : オリジナル小説
ジャンル : 小説・文学

Keyword : 小説 恋愛 ルビー

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夢野広志(むのひろし)

Author:夢野広志(むのひろし)
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オリジナルの恋愛小説を書いています。
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